しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

なぜワクチンを打たないのか

未だワクチンを打ってない人がいる。自分も、まず重症化しない子供は必要ないかと思ってるけど、中年以降は打った方がかかりにくい・重症化しにくいことを発熱外来で実感・体感している。
反ワクチンまではいかなくても、“一応打たないでいる”人の話を聞くと、強めのアレルギー歴のある家族がいて、その人が打たないから*自分も打たないとか、打って熱が出るのが嫌だ・怖い、発熱するような薬を投与することがおかしいという人がいる。しかし投与部位が腫れるとか熱が出るなんて1日か、いっても2〜3日程度で終わる話で、コロナに感染したら仕事等に2週間近く支障をきたすし、万が一(実際には数%の確率で)重症化したら命にも関わるし後遺症もありそう。なんてわかりきったことを言うまでもなく、世界中の専門家がワクチンのリスク(不利益)よりもコロナ感染の不利益の方が大きいと判断したから世界中でワクチンを接種する流れになっているので、これを覆すには、それこそ陰謀論でも持ってこないと、素人の理屈程度ではワクチンを打たないことを正当化できない。"感覚"だけで、相当に可能性の低い大穴に賭けたものだ。

*:打たない方がいいと医者に言われたとのことだが、その判断・伝聞も疑わしい。アナフィラキシー歴があってもコロナワクチン禁忌ではない。ただ、勧めて接種して万が一にも大きな副反応があった場合にクレーマー化しそうな人だと、主治医は、まぁ打たなくてもいいですよと言う気持ちはよくわかる。

1、人工物は悪い
新型コロナ 「反ワクチン派」は何を考えているのか
https://mainichi.jp/articles/20210707/k00/00m/040/134000c
ワクチンを打たない人は、主に3つに分類できる。陰謀論者、単純におびえている人、そして元々のワクチン反対主義者。アメリカでは自然派育児(紙オムツや粉ミルクに反対)の人がいて、それが元々のワクチン反対主義と親和性が高い。
こういう、人工物全般に懐疑的な人っていうのは先進国には一定の割合でいる。おそらくアフリカの都市部以外とかアマゾンや砂漠にはあんまりいないだろう。彼らにとっては、ほんのちょっとの機械や薬が大変便利ってことを実感しているから。先進国で文明にどっぷりだと、そのありがたさがわからなくて、反発してみたくなる。本気なら、山の中で自給自足の原始的生活をしたらどうだろう。必ず寿命が縮む。

2、反知性主義
https://www.iks-cl.com/dr_k_view/dr-ks-point-of-view4/
医者のブログ?なので論理的(にしては同クリニックの“健康寿命延伸を目指して予防医療を展開する”っていうことにエビデンスがあるのか疑問だが)。人々がワクチン接種に批判的になった要因は様々で、反知性主義の親が子に打たせないパターンが結構あって、そういう人は論理よりも感情で動くってことで、それならそういう人にいうことを聞かせたければインフルエンサー(例えば人気YouTuber)なんかを使ってはどうかと。
科学者やら専門家やら医者やらの言うことは信じられない、っていう人は、自分の考え(限りなく思いつきに近いものだが)や、それに近い考えを布教する教祖的人物の言うことを信じるしかない。それは当然非科学的なものになる。本気なら、本筋の医学をしっかりやって詳しくなってから判断すればいいんだけど、そういう努力をする気はない。
高学歴者がオウムを信じたのは、そういう人は学校で教える「これが正しい」ってことを吟味せず信じ込んで覚えるのが得意な人だから当然、とひろゆきは言ってた。さらには認知バイアスによって人間は客観的には正しくないことを思い込み・信じ込みやすい、ということに気づいてないと、ちょっとしたタイミングでコロッと、何らかの思い込みに囚われる。もし身近に「ワクチン接種後になんとなく全身が痛い」なんて人が一人でもいたら(それがしょっちゅう全身を痛がってる不定愁訴おばさんだったとしても)、それみたことかと反ワクチン派になってしまいがちである。

一般的な医学的推奨を信じず、おかしな理論を信奉する人には一定の傾向があるのかと思ってたけど(例えば知能が低いとか、人格障害とか)、どうもそういうのはないみたい。それは例えばオウムを信じる人も創価学会を信じる人も共産主義の人も、ワクチンを打たない人も同じようなもので、それについて何かのタイミングで脳の回路が固定されてしまっただけで、それ以外は案外普通の人なのかと思う。
個人的には、ワクチンを打たないのも自由なので、打たない人が罹患したら(賭けに負けた程度に)馬鹿だなって思いながら粛々と対応するし、コロナが収まったとしてもそれは多くの人が打ったからで、打たなかったフリーライダーを(脱税者程度に)軽蔑する権利はあると思っている。