しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

共感力の高い先生

『スピリチュアルズ』橘玲 を読むと、共感力とメンタライジング(相手の心を理解する能力)というのがあって、両方高いとコミュ力が高い、共感力は高いけど相手の心がわからないのはアスペルガー、相手の心はわかるけど共感しないのはサイコパスみたいに言っている。コミュ力の高い医者はあまり困らないだろう。アスペっぽい医者はたまにいる。失言で患者とトラブルを起こしやすいとか、融通が利かずキレやすい上級医とか。
自分はどちらかというとサイコパス傾向で、患者が色々訴えても共感や同情心はあまり芽生えず、特にやることがない場合なんかは表面上まろやかな言葉で突き放すんだけど、共感力の高い医者からすると冷たい、もっと患者に寄り添えって思うようだ。そういう先生はマッサージ同意書(往診あり)はもちろん、眠剤だろうがビタミン剤だろうが他科の薬だろうが患者の求めにはなるべく応じるべきと考えるし、一部の患者には自分の携帯番号も教えちゃう。一方自分は、医者は何でもかんでも患者サービスすればいいってもんでもないと思う。自分だけの商売なら自由だけど、保険医療は個人の負担額以外の部分を国の財源に頼っているので、患者と自身(の医療機関)の利益のみならず公共的観点からも判断すべきだろう。
本にも書いてあるが、例えば外科医は患者の状況がどうであっても共感(動揺)せず冷静に仕事をしてもらいたい。共感することで公正さや道徳性、客観性が損なわれることも指摘されている。「過度に利他的なひとが、怒りや恐れ、復讐心、信仰心などでも強い感情を持っていることを示唆する。こうして、共感はときに暴力や残虐性と結びつく。」
まったく患者に共感しない医者(高純度のサイコパス)は相当に嫌だけど、医者は科学者としての側面もあるので、患者の心を理解すると同時に、それとは一定の距離を置いて科学的・客観的に判断する姿勢も必要かと。


参考:2020-07-27”良い先生”になりたくない