しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

医療費は高すぎるか、誰が悪いのか

Twitter(現X)あたりでは医療(コストと人)を攻撃する書き込みが目立った(こちらの職業柄)ので考えてみる(詳しくないのでネットから引っ張った情報で大雑把に)。

例)高血圧で再診で処方
診療所で
再診料73点+外来管理料52点+特定疾患療養管理料225点+処方箋料68点+特定疾患処方管理加算66点→4840円。3割負担で1450円。

薬局で(ノルバスクとアジルバを1ヶ月分)
調剤基本料91点、薬学管理料38点、調剤料80点、薬剤料570点→7790円。3割で 2340円。

血圧を測って、5分話して(もっと短いかもしれない)、処方箋発行して5千円近くっていうのは高すぎる、というのは、その点だけ見たらそうかもしれない。
薬の値段については、その性能(24時間血圧を下げる、それを長年続けることで脳卒中などを予防する効果が科学的調査により確認されている)からしたら、一概に高いとも言えない、かもしれないし、これじゃ高い、1錠10円くらいなら文句言わず払ってやるっていう人なら結構多いかもしれない(ジェネリックなら薬剤料は1/3くらいになるかも)。これでも高いっていう人は、ガム1個より薬の価値が低いってことだから、論外とする。

上の例でいうと、純粋な薬代は75%程度で、25%程度は薬局の手間賃に近い(薬が安ければ手間賃の割合はもっと上がる)。
それを言うなら診療所のコストなんてほぼ全額手間賃かもしれない。何かくれたわけじゃないし、肩を揉んでもくれない。ただ待たされて、処方箋という紙を渡されただけだ。
なぜこれが当たり前になっているのか。

1:世界的には高くない
多分。先進国の医療費で日本より安い(自己負担ではなく、全体)というのは想像し難い。医者の年収だけみると、米国は日本より高いけど他は日本よりやや高い程度(https://www.saijuken.com/kaigai/index.php?世界の医師の給料)。旧共産圏は低い(国民平均の2倍程度)。

2:質の高い医療を継続的に提供するには金がかかる
質の高さというのは、質の低さを経験しないとわからない。途上国に行って怪我や病気で受診すればわかるだろう。特に日本ほど臨床検査環境が整っている国は少ない、、、これも推測だが。急に来た患者の血液検査とCTなんかがすぐできる病院がごろごろある(首都圏の場合だけど)、しかもそれほど待たされずに(予約なしの待ち時間では日本は短い方では?)、っていうのはなかなかないだろう。
医者の質は、先進国(含・韓国、トルコ、チェコハンガリーあたりの都会)ではあまり変わりない。突出して高い地域はなさそう。それ以外では、低いということ。十分な教育を受けて最新知識と経験のある医師の判断、というのは目で見えないので、それに対してコストを払いたくないというのはあまりに稚拙であろう。

3:国民総医療費は?
問題と答えはここに集約されてるけどhttps://www.jmari.med.or.jp/download/RE077.pdf
GDP 保健医療支出をみると、他国と大差なし。
健保組合の財政悪化の原因は、高齢化(保険料収入低下と医療費増大)>>経済低成長(保険料収入低下)であって、医者の報酬が高いからじゃない。←これを強調したい

#いやむしろ財務省が財政改善のために、まだ医療従事者の報酬には削る余地があると思って、”医者の給料が高いのが諸悪の根源キャンペーン”を打ってるのではないかという邪推もしたくなる