しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

合成の誤謬

80代女性、元気。当院は高血圧高脂血症(主治医は別の先生)、喘息でA医院、隠れ脳梗塞でB医院、さらに整形外科C医院と血管外科D医院に通院中。薬が多くて困る、大丈夫かと聞かれた。詳しく薬を見たわけじゃないが、おそらく不要そうな薬や重複があるだろう。
私「誰か主治医を決めて全体を診てもらわないと」
患者「でもそれぞれ専門家にかかっているので」
私「一人の主治医を信じて、いらない薬や通院不要のところを決めてもらってそれに従っては?」
それは心配で無理と。
信じられる一人の主治医がいないなら解決は難しく、あとは本人がそれぞれの医師に薬を減らせないか相談するしかない。運が良ければ半分くらいの先生は対応してくれるだろう。運が悪いと半分以上の先生が怒って「必要だから出してるんだ!」とか言うだろう。

合成の誤謬。それぞれの先生は正しいと思って処方しているが、そうして20種類近く薬を飲むのは明らかに正しくない。しかし素人である本人が専門性とか、それぞれの薬に確かな効力があると信じている限りは、そこから逃れることはできない。
本人も、いちばん正しいことをしているつもりで、客観的には失敗している。