しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

損な世代


悔しいが最近の若いモンはとかいう歳になってしまったようだ。それも許されるのではないかと思うほど、ここ20年間で研修医とその待遇が大幅に変わった。当時の自分はまだ大学の研修医でもそこそこの給料を貰えていたが、都内の大学では月収3万円でバイトか仕送り生活というのが普通だった(らしい)。それで研修医がバイト当直等でさんざんやらかしたもんだから、もしくはそれが許されなくなったから、研修医に処置をさせる制限だとか、最近は15~17時になったら強制的に帰宅させねばならない(以後の仕事は上級医がやる)などということになり、代わりに3~5年目に大量のサマリー等(新内科専門医制度)書類仕事をさせることで研修の質を保とうとしている(上級医はそのチェックという仕事も増えた)。当然の反応として若い医者はずーっとPC端末に張り付いている。病棟のPCは常にそいつらに占拠されている。どけ、とも言い難い雰囲気だし、入ってきた上級医のために端末を譲るほどの気遣いは当然ない(カンファ中も居座る他科研修医がいた!)。実際にどけと言ったら即パワハラ、かつそういう上級医のいる科には誰も入らなくなる。
最近の研修医の質が悪いかというと、そうでもない。自分らの頃よりも知識はしっかりしているしある程度は考える(人も多い)。指示待ち人間の比率は変わらないと思われる。自分らが研修医の時は、上級医(といっても今考えると5-6年目で天狗になった若造だが)の指示は絶対でありとりあえず従ったが、最近はそうでもない。指示してもそうでしょうか?なぜですか?納得しないと動かない。いまだに医療は経験がものをいう世界。経験がタダで貰えると考えてるうちは、まだ世間の経験が浅い。マニュアル読んで動画見て手術できるようになるわけないし、内科診療も同様である。批判的検証は必要だけれども、とりあえず指示に従い、後で思考過程を教えてくれというのならわかるが、そういう感じではなく、オレ(研修医)を動かすからにはまずオレが納得する理由を説明せよ、という感じなのである。研修医様の納得よりまずは診療という作業が先だろ!しかし彼らは上級医(の判断)を、科や病院を、まず評価するのである。研修医に、上級医や幹部の判断を正しく評価する能力があるのか?説明されればすぐわかるはず、わからないことは間違っているかやらなくていいこと、というのはマニュアル人間の特徴。世の中、君がすぐ理解できることだけで成り立っているわけではない。
根底には、研修医ができないのは教え方が悪いせいだという考えがあり、また研修指導マニュアルも、研修医がただ自然にしているだけで出来るようになるような指導が目標のように書かれている。上級医に教育義務があるのか?苦労して積み上げた経験と知識をタダで差し上げるんだからとりあえずは敬意を持って従えよ、と思う。上級医の給料には教育という労働分も入っているのか?
といったことは研修医に限ったことではなく、最近はどこの会社でもみられる新入社員あるあるだろう。が、市中病院で医者やってるのに教育とその尻拭いまでが義務となると、自分の労働時間をそれらに割くのは無駄であり、100%診療に使って収入に変換した方が効率的と思ってしまう。狭量だが。

自分たちの上の世代までは、最初はもっと大変だけどその後楽になる(面倒は若いのに押し付ける)けど、自分らは最初わりと大変でその後も楽にならない損な世代と感じているが、どうだろう。