しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

臆面もなく博士号

つくづく大学勤めの医者と勤務医と開業医は違うと感じる。大学の医者は臨床・研究・教育それぞれやるし、勤務医は与えられた仕事をただやるだけのサラリーマンで、開業医は半分以上商売で、後になるほど報酬が高い。逆に地位は、医者業界はアカデミー重視なので(現場・医師会では古参開業医がでかい顔をしてるけど)、金儲けに走った開業医は低く見られる。
開業医は客商売で、客が減れば即収入減で事業継続も危うくなるため、客にウケるためになりふり構わないのは当然であり正当である。クリニックのウェブサイトの医師紹介ページでは、開業するくらいだから自己顕示欲の強い医者は喜んで顔出しと華麗なる経歴を誇示している。肩書き列挙は基本で、なんでもいいから多ければ多いほど格好がつくから、もちろん持ってれば学位を筆頭に、所属学会まで書いたりしてる。
「博士号取得」。博士号っていう言葉は、大学だと聞かないね。素人臭くてベタ過ぎて恥ずかしい。個人的には、学位持ちすなわち博士と名乗るのであれば、自分で研究テーマを見つけて研究方法を考えて実行し論文まで書ける能力・研究者として一人前の証明、と考えたいところだが現実的には学位はもっとカジュアルでイージーなものになっている。学位の種類では、医学博士が一番取りやすいと聞く。自分が所属していた三流私大では、医局によっては研修医上がりでしばらく病棟をやったら全員大学院に入れて研究と奉公をさせる、すなわち全員学位を取らせる方針の科もあったけど、だから全員が論文を書けるようになるかというとそんな筈もなく、大学院を出て講師をしてるけど英語の論文は何年も書いてない、っていう人が珍しくない(参考:研究者は止まったら死ぬ)。というかほとんどそうだ。それが三流私大。
そんななので、科の中で院生の指導をできる人は稀で、多くは学位指導を基礎系研究室に丸投げして、本人たちはそこで言われるがままの"作業"を行い、実力は不明瞭ながらしかし大学院を卒業する頃には一人前のプライドだけは育って、今更泥臭い臨床(病棟)だの当直だのはしたくないだとか、講師はいつなれるんだとか、地方の病院に飛ばすとは何事だ・辞めてやるとか、そんな話ばかりで、将来教授を目指すような、公平な教授選で勝負できる程の実績と実力を持つような研究者かつ臨床医に育った人材の話は寡聞にして知らず。それでも大学に残って講師になったら一応院生の指導とかするけど、うまくいかなくて揉めてるみたいな話は多い。もちろんほとんどの医者は院卒後大学を離れ、一部は開業し、論文なんて何年も読んですらないけど経歴に「博士号取得」と書く。そういう例が多いけど、どうかなと思うのです。

尚、勤務医では学位を持ってても良いことはあまりない。ただ、ナントカ手当てとして学位やら専門医1件につき月5000円給料が増えるという病院があったけど、自分の場合は大学院の学費年75万円x4年*+30万円(学位審査の謝礼10万円x3人)で計330万円かかったので、ペイするにはその病院に55年間勤務する必要がある!

*:私の能力と働きが凡庸にもかかわらず指導教官に恵まれたので論文が早く完成し3年で卒業できそうだったが、院には4年間在籍し学費を全額払うよう圧力が来た。さすが三流大。