しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

永久に死にたくない人

84歳くらいの女性、軽度難聴・認知症あり、の人が付き添いと入ってくるなり「ダイチョウ調べて欲しいから紹介状書いて」と。聞くと、3年ごとにCFしているからまたお願い、というが、前回は特に所見なしで、ポリープとかも指摘されてないらしい。紹介してもいいけど、今この人にCF必要?と聞かれたらハイとは言えない感じなので、
・この歳ですし、体に負担のある検査なので、特にそういう病気が疑われない人に強くお勧めはしません
・この歳まで大丈夫なら、今から大腸癌が見つかる可能性は低そう
などと言うが「まだ生きたいんだよ、癌になりたくない」と言うのでさらに
・今のあなたは大腸癌で命を取られる可能性よりも、肺炎でやられる可能性の方がずっと高い
と言うと、それなら肺炎の方が心配だし、負担のある検査はしたくない、と要求を取り下げた。


【感想】
1. でも自院でやってるGFについては萎縮性胃炎だけの80代に毎年やらせてる(病院経営上及び、毎年きっちり検査しないと気が済まない重鎮高齢医師の方針)ので、私は純粋に患者のことを考えて検査の医学的必要性を検討しているわけではなく、(この人に医療リソースを割く価値がないという個人的判断+)紹介状が面倒+紹介先との関係性のためにこの患者の希望を阻止した。私は良医ではない。
2. 80代の認知症なのに(だからむしろ?)まだまだ死にたくない、いろいろ検査して最高の医療で最大限長生きさせて欲しいと思っている。生命への執着というか、力強さというか。自分は80代でGFCFなんてしたくない、自然な経過で、癌になったら潔く死のうと思ってるけど、いざその歳になったら、医学の進歩により末期でない限り癌進行は止められるようになってたりして、だとしたら低侵襲内視鏡みたいなのがあればそれくらいやろうかな?なんて宗旨替えするかもしれない。その程度の人間である。