しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

オーベルシュタイン礼讃

繰り返すが、自分は患者受けの良い医者が疑わしい。自分が患者受け悪いから言ってるわけではない(苦情はそれほど多くないようだし)。
努力すれば良くなりますと希望を与えて、一緒にがんばりましょうみたいな先生がいる。そういう先生にはファンというか信者が多くて、他の医者からすると、そういう患者は扱いづらいことこの上ない。信者は、その先生の言う事が一番正しいと信じて疑わないから、ちょっとでも違うことはできない。そんな先生は当然、根っからのポジティブ志向の善人(善人の危険性については中島義道が詳しい)で、私も頑張ってるからあなたも頑張りましょう、私の言う通りにすればきっと改善するからちゃんと通いなさい、と本気で言ってるのがヤバい。ほとんどの病気は加齢が一番の悪化危険因子なんだから、長期戦は勝ち目がなくて本当のところは「良くて現状維持」なんだけど、患者側としてもそれで納得するほど欲がないわけじゃなくて何歳になっても当然、改善を期待する。けどもクリニックに通うような慢性疾患は短期間ではあまり変化しないから、もりもりの投薬はもちろん、効果あるんだか無いんだかわからないリハビリやら運動しましょうとか、食事に気を付けましょうなんてメシのまずくなるようなことを言ってこっちは治療した気になり、言われた方もハイハイと聞き流して「気を付けてはいるんですけどねー」なんていうお医者さんゴッコ、希望劇場を延々と続けている。患者からすると話は聞いてくれるし、良かれとアドバイスしてくれるから良い先生ってことになるけど、客観的にみれば”基本的に徐々に悪化する。薬やその他の効果は極めて限定的(特に高齢者)”という真実からお互いに目を背けるために必死って感じ。さらにそこには、意識してるのか無意識でか、商売上の必要性において客をつなぎとめている成分が無いとも言えない。そんで死んじゃったら死人に口なし、家族とは「ご本人はよく頑張ったんですけどね~」などと世間話して即座に忘れるくらい根性がすわってないと善人ではいられない。

本当に誠実な医者なら、高齢者には、あなたはこの歳で薬を飲んでも無駄だからやめてみるのはどうでしょう。検査して病気が見つかってもどうせ治療できない・しないなら検査自体無駄です。通院する暇があったら残り少ない人生を楽しんでください(いやむしろ暇だから通院しているのだが)。などと客観的合理的見解を伝えるべきだろうが、高齢者が一番認めたくないのは自分が高齢(で死が近い)という事実だから、このように真実を突き付けられても気分が悪いだけだろう。そんなこと、言われなくても気づいてるよと(ただ納得はできてない)。
(全額のうち1割程度ではあるが)金を払っているのだから、病気を良くすることができないならせめて気分くらいは良くしてくれよ→そのために希望劇場を続けよう、というのもアリだけど、自分の感覚では、そのような希望の皮を被った嘘に気付かないのは愚か・気づいて言い続けることは不誠実であり、それなら嫌われても真実と思うことを話すべきだと思っている。