しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

ブランド病院に通う意味

70代女性、心臓病(弁膜症術後)で女子医大に通院してます(経過観察のみ)。
同、橋本病で表参道の伊藤病院に通院してます(定期検査のみ)。

そういう人を散見する。特に後者は結構いて、こんな遠くにも患者が!と思う。この調子だと膨大な患者を抱えてるんだろうな伊藤病院は。患者は何年か十何年か、このあたりから1時間もかけて電車乗って表参道まで行って、毎回違う医者で通り一遍の検査をして帰ってくることに疑問を持たない。むしろ、かかりつけの当院で同じ検査しますよと言っても結構ですと。“私の甲状腺はこんな専門でもないところで診られるほど安っぽくない!“とでも言わんばかりである。
このブランド志向は何だろう。医者ならわかるはずだが、こういった安定した高齢者が(若くてもそうだが)都内の大学病院やら伊藤病院に行く意味はない。術後の経過観察(10年とか経ってそうだが)で手術した病院に通院というのはわかるけど、ヨレヨレ歩いてるような高齢者が1時間以上かけて遠い都心の大学病院まで行っても仕方ない。郊外とはいえ近くには心外のある病院も循環器系のクリニックもいくらでもあるんだから、そういうところで経過観察するのが妥当だろう。大学病院の医者もどういうつもりで延々通院させてるのか、もしくは患者本人の強い希望かわからないが、自分だったら少々手間かけて調べて患者の自宅近辺に紹介する。そこまでして外来患者を抱えこもうとするのはおかしい。もし患者の希望なら仕方ない。ブランド志向だか思い込みはなかなか変わらないし、いまだに紹介≒見捨てられたと思う人は多い。心臓になんかあったら1時間かかっても都内まで救急車で行くとか言ってた人もいるけど、MIだったら相当に勝ち目のない賭けだ。
患者は結構、この病気はどこにかかったらいいかわからないという人が多い。信頼できるかかりつけがあれば、そこで聞けばいいんだけど、ない場合は素人がいきなりネットや雑誌(まだあるのかな?名医のいる病院とか病院ランキングみたいなムックは)で調べてそれを真に受けるから、ヨックモックのシガールやユーハイムのバームクーヘンを買いにわざわざ日本橋や銀座のデパートに行くような、おかしなことになる。