しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

老人の誤作動による自動車事故は尽きまじ

死亡自動車事故における75歳以上高齢者の割合は増えている。単純に、運転する老人が増えているから。昔の高齢者は車の運転なんてしなかった。もちろん免許を返納したからではなく、もともと免許を持っている人が少なかったから。例えば私の祖父は大正生まれとかなので(もう亡くなっているが)、その人が20代のときに仕事に関係せず自動車運転免許を取ったかというと、戦争前後の時代で、よほど裕福でないと難しかった。それに対し、今の70代が20代のとき、約50年前の1960~70年代は日本も豊かになって、免許を取って車を買う人がすごく増えたと思われる。ちょうど自分の両親世代。

外来で話していると、80代のじいちゃんばあちゃんでも車で通院する人は多い。やや郊外だから、バス(駅そばでないため)を乗り継いで、というのも確かに面倒だ。けど受診なんて、自分のとこだけなら1~2か月に1回。ま、他の病院やクリニックにいくつも通院してはいるんだろうが。

運転大丈夫?と聞くと必ず「車がないと生活できない」と言う(注)。またかと、子供などにも言われて嫌気がさしている感じもする。けど、そこそこ運転に自信もありそう。でもその自信は信頼できない。感覚は常に10年20年遅れる。自分も30代の感覚のままで、おそらく60歳くらいまでは、そういうつもりだろうから。でも自分は自分の衰えに気付いている(つもり)。80代で、まだまだ運転に支障ないと思っているならとても危険だ。80代の感覚の鈍さ(いわゆる反射神経とか咄嗟の判断・動作)は確実。詳細は知らぬがおそらく免許の更新時にそういったDVDを必ず見せられる筈なんだが。歩行もままならず、荷物も持てないような人が車を運転してるのは怖い。
やはり何かきっかけがないと便利な車を手放せない。一定年齢になったら認知症検査のみならず、身体能力、反応性、判断力とか法規の試験でもして、引導を渡してやった方がいい。その方が本人も諦めがつくし、事故を起こしてからやめるのはお互いに不幸。免許の自主返納を期待しても無駄だろう、自分の能力を客観的に判断できないのが高齢者。

認知症治療薬はもちろん、睡眠薬も「自動車運転等禁止」なんで、その方向から釘を刺しておくのも(嫌われたくない、自分自身も高齢の開業医は言えない)

注…そんな生活スタイルは見直すべきなのだが、忠告にも耳を貸さずなんとなくそのままにしといて、後に大問題になって困ってから対応しようとする(がもう遅くてリカバリできない)のが高齢者の特徴。生活もそうだし、後継者も決めないまま倒れちゃう開業の先生とかね