しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

小市民勤務医

嘉門達夫の歌からしても、小市民とは「とるに足らない無名の一市民」のことかと思っていたが、実はプチ・ブルジョワジーの訳で(ブルジョワジー=市民???)中産階級を指すようで。金持ちではないけど、低所得な労働者や農民よりは上にある。勤務医は小市民といって間違いではない。金はそこそこでホワイトカラーのようだが実はブルーカラー的労働者だし。

去年から仕事は定時だけで休日も労働しないから、まさに小市民的生活を送っている。
コロナで旅行も行かないから、まったく毎日同じような変化のないもの。
安心と退屈(と虚無感)が混ざったグレー。

ところで
Shit Job:イヤな仕事
と、
Bullshit Job:クソくだらなくて意味のない仕事
という言葉がある。本人すら気づいてるほど無意味な仕事。仕事をしていなくても、誰も気づかない仕事。でも、公にはそうは言えない仕事。
https://www.catapultsuplex.com/entry/bullshit-jobs

しかしそういう仕事は楽で儲かるらしい
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69052

老人の健診は、予後や症状改善に影響しないから、医学的にはほぼBullshit Jobと言っていいだろう。ただし社会的には本人の満足、病院の収益ひいては自分を雇う(自分と家族を養う)理由になっているから、意味がないとも言い切れない。本来なら、そういう無駄な医療をやめる方向に老人を啓蒙、かつ医療界と政治にも働きかけるのが正しいだろうが、日本人は合理的じゃないから難しい(し自分もやる気がない)。

例えば75歳以上の、それらしい既往のない高齢者にスタチンを出し続ける理由はないと自分は考えるが、もう来なくていいですよとは言いづらいし、むしろ楽な患者として通わせ続ける。それも、可能なら毎月来させる。外来である程度の患者を抱えてないと、勤務医としての自分の必要性が疑われる。開業医なら収入に直結だから、よほど儲かってるところを除き、もう来なくていいよとはまず言えない。大病院・総合病院でもそういった傾向はあり、外来いっぱいやってるという実績誇示のために、頭数を稼げる楽な患者は抱えておく。そのかわり専門性において興味の外の患者は出そうとする(性格が合わない場合は尚更)。大きい病院だと基本的に入院で稼ぐから、回転と差額ベッド代のために、ベッドに空きがあれば入院(手術)必要性の敷居は下げて、入れたら出来るだけ金かけずにDPCのIか、II期間で退院させる。
国民皆保険制度が絞らない限り、医療側は患者を脅して無駄な医療の押し売りをやめない(それへの反発として医者からも極端な医療否定論が出てくる。例えば近藤誠)
ただこれは経済原理からいって当然である。自然といってもい。医学とか倫理があってもやはり誰でも自分の生活の方が重要だし、そうしないと現代日本医療機関は黒字になれない。
自分はわかってやってるつもりだが、そうでない医者もいる。例えば高齢者に薬もりもりでも検査結果をすべて基準値内にしようとする医者がいるが、これは俯瞰的に考えられない=頭が悪いとしか思えない。本人はきっちり正しいことをしているつもりで、患者にも本気でそう説明しているからタチが悪い(m3でも、高齢者の検査・治療やめようという発言には必ず反論が来る)。私が病院経営者なら、こういう医者を抱えておきたいが、実は社会リソース浪費者でしかない。

私は今日もbullshit jopを、そうと知りながら続けている。