しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

学会というギルド、専門医という免罪符

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研修医が来るような一定規模以上の病院で中堅以上の内科医ならきっと、内科新専門医制度に悩まされているだろう。そんな制度の係の末端の自分には日本専門医機構ってよくわからないが、おそらく厚労省が各学会と、学会が独自にやってる専門医制度を管理するために作ったもので、学会は金払って祭りに参加する医者に専門医っていうお墨付を与えるギルドそのもので、そのギルドもまた国に管理されちゃったということか。

医者はわかってるけど、専門医持ってるから実力が高いってわけじゃないし、逆に無くても専門臨床をずっとやってるとか、例えばカメラのうまい先生もいて、専門医資格では医者を鑑別できない。いるでしょ、専門医だけはいくつも持ってるけど全然デキナイ人ってのも、各病院に1人くらいは。ただ有名病院とか、一定以上の地位に就くような人はまず当然持ってるでしょう。雇う方としては、やっぱり持ってる方がやや信用あるかなってのはある。尚、医学博士ってのはもっともっと信用が無い。大学で偉くなるのでなければ、ほぼ不要って感じ。

もう専門医持ってる人は、粛々と金払って年1回学会詣でして維持すればいい。転職の際には有利そうな気がする。これから取る若い先生は大変、内科の場合は各分野満遍なく160症例以上をまとめ、逐次ネットに登録する必要がある。同時に、オーベンはこれをチェックしなくてはならず、同じ数だけ添削させられる。さらにオーベンは研修施設登録、研修プログラムの整備とか、他院と連携して1年は出向させなきゃいけないとかの手配も必要。全分野の症例を集めるとなると大学が有利だから、この制度は市中病院に流れた研修医の大学への回帰および医局制度の再強化にもつながる(地方で医局制度崩壊したら過疎地域の医者がいなくなるだろう)。
さらに、内科各分野の専門医も取るとなると(普通そうだろうが)、そっちでも同様の手間がかかり、市中病院なのに大学並みの雑用となる。こんなのやってられるか。

この制度は走り出したばかりで不透明感甚だしく、内科も各専門分野の学会も今後どうなるかわからないし、大きな問題(あんだけやって不合格続出とか、全員合格とか、オーベンのせいで滞るとか、地域によっては症例が無いとか)を避けるべく修正しつつ進むんだろうが、初期研修医制度もそうだけど、現場の声は通らず机上の空論で物事が決まっちゃうから、結局手間ばっかりかかって成長が遅くなり、新制度の専門医だからってデキるとは限らない、という同じ事になるような気もする。

専門医の維持は、年会費と総会参加はともかく、毎回試験にはまずならないだろうけど、内科みたく5年に1回は問題集解けとか(これは勉強にはなる―グーグル先生様。問題作らされる人ご苦労様)、場合によっては何十症例の病歴要約(症例リスト)出せって言われると、バイト暮らしになったら維持できなさそう。そういう形ばかり専門医を切るのも制度変更の目的だろうが。あとは厚労省と学会に従わない野良医師撲滅のため。バイトすら専門医必須になったら、フリーターや野良は医療過疎地域に流れるしかない、となると、医療資源の適正配分に貢献するかも。辺境は、高額報酬ヒャッハーなゴロツキ医者(馬鹿にしているわけではない。自分もなりそうだから)を居ないよりゃマシって雇うが居付かずコロコロ変わったりね。