しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

"副作用"について思うこと

副作用とは?
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19351.html
「副作用とは、医薬品との因果関係が否定されない医薬品の使用により生じた有害な反応です。英語ではadversedrugreaction、ADRと言います。一方、因果関係の有無を問わず、単に医薬品の使用によって生じたあらゆる好ましくない有害な反応を有害事象と呼びます。
因果関係を完全に否定しているのは「関係なし」なので、「たぶん関係なし」、「不明」を含めて副作用として取り扱います。」

 

つまり因果関係不明(否定はできない)の事象も副作用とされる。けれども一般人はそういうことを知らず、突拍子もない症状を言って「この前あんたが出した薬の副作用だろう」なんて言ってくる。
レーズンを食べてから頭が痛くなるという人がいたら、レーズンの能書の副作用にはきっと頭痛と書いてあるだろう。そして別の頭痛持ちの人がレーズンを食べていつもの頭痛が起こったら、これのせいって思うだろう。ほら能書に書いてあると。でも常識的にそういうことはない(レーズンに含まれるチラミンで偏頭痛という話はここでは無しとする──子供の頃、レーズン嫌いの友達が、頭が痛くなるほど嫌いと言ってたので)
腹痛、頭痛、かゆみ、しびれ、倦怠感云々、よくある症状というものは非特異的である。つまりよくある症状の原因を特定するのは難しい(現実的には、一過性のそういった症状の原因は"ない"と言って良い。そういう感覚が起こっては消えるのは、生きている人間にはよくあること)。けれども、疑わしい(という気持ちで内服された)薬は即座に犯人にされる。人間は、因果関係がわからないと不安で仕方ないので、誰でもいいから犯人を捕まえなくてはならない。事件現場に、たまたまよそ者がいたらどうなるか。
定義上、あらゆる薬の副作用欄には、あらゆる非特異的症状が書かれており、それを真に受ける人が多い。本当に因果関係がはっきりしていて、もしくははっきりしていないが明らかに頻発することが経験される少数の副作用は、能書に書かれた多数の副作用に埋もれ、その薬のことをよく知っている医師のみがそれをわかってて、一般人には知り得ないということになる。