しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

説明はしても説得はしたくない

症状を訴えるけど薬を飲みたくない人って何?って話は先日(2022.2.28)書いた。そこまでではないけど、薬を増やしたくない人の傾向を考える。
経験的に、降圧薬は飲むけど高脂血症、糖尿病の薬は飲みたくない、っていう人が結構いる。程度にもよるけど、スタチンの必要性(一次予防目的)はやや低いにしても、糖尿病薬の必要性は血圧同様に高いはず。もちろん素人には薬の必要性なんてわからないから、無責任なマスコミや知人から醸成された感覚的反応に過ぎないのだけれど、そういうのを診察室で変えるのは難しい。
やっぱり高血圧は体に悪い・下げなくてはならない、っていう気持ちは強く一般に浸透しているようだ(個人的には後期高齢者収縮期血圧150なんてほっといてやれよと思うけど)。ただ年齢+90まではいいでしょ、っていう人が割といる(おそらく根拠はない)。処方する側の目的は脳梗塞や腎機能低下予防が中心だろうけど、飲む方はそんなことは知らない。ほとんどの人は「血圧高いとやばい」で思考停止している。
高脂血症薬(ほぼスタチンのこと)は、ちょっと前までは心筋梗塞のみならず総死亡も減らす万能薬・長寿薬みたいに言われてたけど、一般人には伝わってないようで、コレステロールが高いなら卵と油を減らそう(薬飲むほどじゃないでしょ)程度の認識で、スタチンを飲みたがらない人が多い。無責任週刊誌(たまに医者が書いてる場合も。浅はかな裏切り者かトンデモか)で「飲んではいけないクスリ」みたいに紹介されたこともあるせいか。もちろん医者は副作用リスクも勘案してメリットが勝るから薦めているのだが、説得は高率に徒労に終わる。
これらの治療については確かに医者の間でも懐疑論がある。名郷直樹先生の本を読むと、スタチンは日本人にはあまり効果ないかも、とも思う。降圧についても、高齢者なら薬を飲んでも数ヶ月の予後を伸ばす・脳梗塞発症を遅らす程度とのこと。
薬は飲むけど1個まで、っていう人も謎だ。あなたの体が、病気が1個しかかからない体ならいいんだけど。(そこでカデュエット、、、なんか奇形的な薬なんだよなぁ)
糖尿病の治療目標は、以前は感覚的に60歳代HbA1c 6%台、70歳代7%台、80歳以上8%台みたいに言われてた。現在の学会のコントロール目標は結構厳しいけど、海外の報告によると長期経過した高齢者にそんなに厳しいコントロールはいらないとされている。
参考:南郷栄秀先生のウェブサイトhttp://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_diabetes.html
これに従ってこちらも相当に緩い(糖尿病専門医から怒られそうなほど)コントロールをしようとしているんだけど、それでも飲んでくれない。
#血圧だけ下げてHbA1c 9%は放置って何だよ〜 という心の声

あとHT、HL、DMいずれも「自分グレーゾーンですよね?」という。完全にクロなんだけれども。(参考:画像)