しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

マスクは意味があるのか?

f:id:crknbtgrg:20210316114406j:plain外来で患者さんに、先生マスクがちゃんとできてないですよと注意された。あちらも非難の意図はなく、こちらも嫌な気持ちはなかったが、自分はそもそもちゃんとマスクをしようという気があまりないので、何とも思わなかった。
マスクは本当に有効なんだろうか。不織布製なら飛沫飛散防止には有効だろう。布や、ウレタン製は効果が弱い。飛沫吸入防止効果は、飛散防止効果よりも弱いけど割とあるみたい(画像)。ただ、より粒子の小さい飛沫核感染(空気感染)を防ぐ(吸入阻止)にはこれらじゃだめで、N95が必要だけれども、特定の医療従事者以外にはN95着用は現実的じゃないね。N95にしても、本当にうまく装着しない限り、確実な効果はないでしょう。自分で装着しても、ピッタリしてないなぁと思う。

飛散防止はよしとして、実際的にマスクの感染予防効果はどうか。これまでの研究で、インフルエンザについてはマスクの有効性は証明されていない。
http://www.virology.med.tohoku.ac.jp/pandemicflu/protect3.html
新型コロナに対するマスクの効果を厳密に検討した研究はまだない。そのためコロナにマスクが効果あるか、は推論の域を出ない。
Lancetの論文は、SARSやMERSの研究でマスクが効果ありとのこと。
2020.6.1 Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis
一方、こちらでは効果が証明されなかった
Masks for Prevention of Respiratory Virus Infections, Including SARS-CoV-2, in Health Care and Community Settings. A Living Rapid Review. Ann Intern Med. 2020;173:542-555.
池田正行先生「マスクはおまじない」
https://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/nomask_nocovid19.html#downfall_mask_fascism
直感的に、しないよりはした方がコロナの蔓延を防げそうだけど、現実が想像と異なることは多い。臨床研究はそれを確かめるためにやる、そういう面もある。

論理的に考えてみる。現在のコロナ患者数は、東京千葉埼玉など多いところで10万人あたり10人かもうちょっと。およそ人口1万人に1人が現在コロナに感染している。無症状者がいるとして倍の、1万人に2人としよう。となると1万人のうち残り9998人は感染していない。感染していない人どうしがマスクをする意味はない。つまりすべての人がマスクをすること(universal masking)は、ほとんどの人にとって無意味だけど、それを徹底していれば、ごく稀(1万人に1〜2人、0.01〜2%の確率)に存在する無症状のコロナ感染者もマスクをしているだろうから、その人が他人にうつす確率を減らせるだろう、ということ。そもそもが大無駄覚悟の作戦。ベトコンが一人いそうだから村人全員殺しちゃおうっていうような粗雑・乱暴なやり方、しかしそれで少しの安心は得られる。
特定の個人、自分かそこのあの人、その一人について言えばおそらくコロナにかかってないのでマスクの意味はない。コロナの流行を防ぐためには、特定の個人がマスクをする意義はとても小さい・ほとんどないけど、全体がマスクをすることには意味がありそうだ、というのが混乱するところ。だからマスクをしない特定の個人を攻撃することは無意味。
前述の通り、すべての人がマスクをすることに本当に感染予防効果があるか、ロックダウンや緊急事態宣言の効果は、そういう研究をしてみないことにはわからない。けど、他にもっと効果的な方法もないし、何もやらないよりは良さそうだから(少なくともマスクしてれば非難されないし、マスクしてなければ確実に非難されるという現実はある。そういう世の中になってしまった)、世界中でマスクをしましょうということになった(当初、欧米ではマスクなんて笑いとばしてたのにね)。
みんな、こんな曖昧な根拠のもと、マスクを強要し活動を制限していることを、100年後の人はどう思うだろうか。