しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

縁なき衆生は度し難し

私の処方内容をネットで確認する患者
私が若造だからか(しっかり中年だが)、単に言葉に信用の重みがないのか。
新しい薬を出すときにはわりと説明しているつもりだけど、後になって「やっぱりネットで調べたら副作用が怖いから飲まなくていいですか」とか、「テレビでこの薬は顎の骨が溶けるって言ってたから飲みたくありません」「薬をやめたら骨折しやすくなるんですか?」とか(骨粗鬆症薬)言ってくる人が目立つ。だいたい高齢者。雑誌は相当に胡散臭い記事が多いけど、テレビでもいたずらに副作用の恐怖心を煽るような内容だったのか(浜六郎みたいに)、それともその患者さんの受け取り方の問題か。
最終的には自分とメディアのどっちを信用するか?ってことになるけど、自分はそういう勝負はしたくないので、心配ならやめときましょう、飲みたいならどうぞ、って感じに消極的に対応することにしている。もちろん当方としては医学的必要性が十分にリスクを上回ると判断したから処方したのであって、それにもかかわらず不安で迷っているということは、その時点でこちらの旗色は悪く挽回は難しそうで、ゴリ押ししてもさらに信用を失うか、ノセボ効果で誤解が補強されたり、来なくなる・出した薬を飲んでると嘘をついて飲まない(たまに自宅から数年分の薬が発見されることがある。捨てるのも抵抗があったのか)などこじれやすいので、ならば自分はシンプルに、現在のところ治療希望なしとして経過観察する方に進む。
メディアを盲信している高齢者を説伏するのは難しい。脱洗脳・逆洗脳みたいな技術が必要だが(合理的説明はすでに無効)、内科外来でやることではない。

後日談
「他の病院でこの件を相談したら、その薬は必要だからちゃんと飲みなさいって言われました。先生は何であの時もっとはっきり必要性を説明してくれなかったんですか!」
どう転んでも勝ち目なし。