しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

仕事に私情を挟まない?

 ビジネスはプライベートとは別で、冷静な判断の邪魔になるから私情は捨てるべきかというと、医者の場合は微妙で、困っている患者相手に優しさもなく、ビジネス=利益至上主義として足元を見て金儲けに走るのはどうだろう。少々客を騙してグレーゾーンの自費診療を行っていう医者も多い(にんにく注射、ビタミン点滴とか)。カネの前では、優しさはもちろん医学的正しさも私情ということになる。
いやビジネス=金儲けではない。医者のビジネスとは医学的整合性の追求であり、科学的事実(エビデンス)に基づきわが国の医療保険の枠内で検査・診断・治療を行うべきである、っていうのもある。自分は割とこのタイプだが、私情=優しさやある程度の迎合が不足すると患者からは好かれないし、私情=利益追求とするなら、少しばかりの過剰検査や頻繁な再診で病院の増収を図ることは、経営者(院長)でなくても、病院の維持(自分に給料を払い続けてくれること)のためには必要だろう。

一方、仕事に私情を挟まないどころか真逆で仕事=私情っていう人情先生みたいなのも結構いて、医学やルールやより患者の気持ち優先で、エビデンスとか適応症とか病院の経営は二の次で、大変だったねー薬欲しい?いいよいいよ好きなだけ出すよって、精神的に脆弱で医者や薬に依存しやすい老人にどんどん処方を増やしちゃってポリファーマシーをやりまくったりする先生もいる。患者としては(表面的には)快適なので、そっちの方が人気はあるが、人情先生の患者はほぼ信者なので、他の医者からすると扱いづらい。

どうすべきとかいう話でなく、その医者の性格通りの診療スタイルに落ち着くもので、人情がないのに意識的に患者サービスをしようとしてもなかなかうまくいかないし、経営的に利益追求しないとやってけないところはそうするしかない。多くの患者は人情先生を求めるけど、それほどウェットで密な関係を求めない患者もいる。どんな医者でも少数のファンはいるもの。
患者に合わせて診療スタイルを調整するのは誰でもやってるけれども、それが巧みだと患者から平均的に高評価を得やすい。開業医ならそれで患者が増えて経営的には助かるかもしれないけどこれ以上繁盛しなくていいとか(例:自分のやりたいようにやるのでそれに納得した患者だけ来ればいい)、勤務医だと(人気者になりたい人以外は)患者にそんなに好かれなくてもいいから(患者が増えても忙しくなるだけで給料は増えない)、やっぱり自分の性格通りにやってればいいっていうことになる。というか、そうなってしまう・そうするしかない。