しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

テキトーマスクかワクチン済みか

ちょっと前にとある講演会に出たら、出席者の多くは老人なんだけど、彼らお手製の布マスクを渡され、いま付けろと。言うまでもなく普段使っている不織布のサージカルマスクと比べ、ペラペラの手ぬぐいを加工して作ったマスクの飛沫防止効果は低いんだろうが、彼らはそういったことはわかってない。むしろ頑張って手作りしてます(もうマスクなんていくらでも安売りしているが)、コロナ禍の皆さんにマスクと元気をあげたい、みたいな精神論のみ。例えばワクチン未接種+手作り布マスクより、ワクチン2回接種済みでノーマスクの方が、コロナ罹患及び媒介率は低いのではないか。CDCは、ワクチン接種後なら乗り物以外ではマスク不要と言っているし。つまり布マスクはウイルスよりも精神的感情的安心のためか。
新型コロナウイルス感染症というのは医学(科学)的な現象だが、非専門家に渡った途端にその人のレベルで理解できる感情・精神論にダウンコンバートされ、その解像度(感覚的判断)で取り扱われる。そしてそこの感覚的(非医学的)判断が医学的に正しいかどうかというチェックには消極的である。なるべく自分たちのみで決めたいし、常に上から目線の専門家の意見はうっとおしいのだ。日本あたりは国のトップにしてもこんなで、専門家の意見の軽視は近代日本のお家芸か。もちろん、専門家といってもいろいろだし(だからこそ多くの専門家の意見を聞くべきだが)、医学の専門家は感染については考えるけどオリンピックの可否を判断することはできないから、最終的判断は常に感覚なんだけれども。
人間の幸福追求は科学じゃなくて感覚・感情・精神の範疇だから、そこに科学のような絶対的な正しさも誤りもない。医者としては残念なことに、人間の主要評価項目は感情・感覚で、医療が介入できるのは副次評価項目程度に過ぎない。