しがない内科医の雑念

底辺医がなんか語っとる

糖尿病患者を生暖かく見守る

内科医で糖尿病患者を診たことない人はいないだろうし、それならば糖尿病患者の性格の悪さというか頭の悪さというか意地汚さ(食に対する執着)はおわかりのことと思う。全員ではない。そういう悪質さのない人は食事も薬もきっちりやってコントロールが良い。
だらしないから血糖コントロールも悪い、それはもちろんだけど、高血糖による血管障害に加え、実は高血糖による脳細胞への直接障害もあってあんな性格・知能になってしまうのではないかと想像してたけど、最近聞いた話から考えるとやや納得できた。
糖尿病患者の高血糖は結果であって原因ではない。糖尿病の病態の中心はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性(感受性低下)で、特に後者が問題となる。まず1型について考えると、純粋なインスリン分泌低下なら適量のインスリンを補充すれば病態は完全に解消されるはずである。2型、インスリン感受性低下の治療は簡単ではない。ピオグリタゾンとビグアナイド剤がその薬だけど、これらを投与すれば健常人と同じインスリン感受性になるとは到底思えない。現時点ではインスリン感受性を完全に正常化させる薬はない。となると、(2型)糖尿病患者の細胞ではグルコースが十分取り込まれず常に不足している。脳は体中の細胞のグルコース不足を感知しており、そのためのあらゆる行動を取らせる、つまり人間がたくさん食べるように行動させる。そして細胞の目の前の血管には大量のグルコースが来たとしても、細胞内には少ししか入ってこない。細胞レベルからストレスがある。脳にとって、摂食行動や血糖を上げようとするのはまさしく正当な活動なんだけど、いくらがんばっても十分なグルコースが細胞内に供給されないというストレスがある。その上医者からは食うなと言われる。その状態が一生続くとなると性格がすさむのもわかる。老化が進むのも早いらしい。
ということで、(2型)糖尿病の病態の中心はインスリン感受性の低下であるからビグアナイド剤が第一選択なのも当然である。いくら厳格に血糖コントロールをしても臓器合併症や予後が良くなるわけではないことは多くの研究が裏付けているが、それは血糖コントロールという細胞外の問題よりも、細胞内へのグルコースの安定供給が重要だからではないか。

糖尿病患者は、食べても食べても(細胞が)満たされず、むしろ高血糖で血管その他臓器がやられるという生きながら”餓鬼”のようなかわいそうな人なので、ダメでも見捨てないでやろう。HbA1cの上がり下がりで一喜一憂させるような医療は適切ではない。むしろ緩めに人生の最後は楽しんで頂き、早死にするのは地獄のような人生を短くしてくれる仏の慈悲なのです。

(一部書き直しました)